どのような状態が,宇宙のエントロピーが最大な状態になるのだろうか。 これについては,まだ本当に確かなことは分かってはいないと思う。 一般相対性理論と量子力学が統合した大統一理論ができないと, 確実なことはわからない。 ただ,質量のほとんどは2.7K(絶対温度で2,7度)の電磁波にもどらなくてはいけない。 粒子が質量をもつ場合,そのエネルギー状態は高く, その存在確率は2.7Kではほとんど0のはずである。 したがって,エントロピーの大きな状態では質量はほとんど存在せず, ほとんどのエネルギーが光子のような状態で存在するはずである (正確には,宇宙は膨張しているので,宇宙の温度は時間とともに低下していく)。 質量を光に変えることに人間が貢献するとすれば, ブラックホールを使って,質量を使えるエネルギーに変換して利用するときと思う。 ブラックホールは質量を供給しないと,電磁波を放出して蒸発すると考えられているので, これで宇宙の質量を電磁波に変えることができるはずである。 私は宗教は全く信じていないが, 「光あれ」という言葉で始まった世界は,ほとんどすべてのものが光になって終わる, そして人間の役割は,ほとんどすべてのものを光に変えることだ, と言えば昔でも火あぶりにされなくてすむかもしれない。 しなしながら,ブラックホールの利用は現在の人間では技術的に不可能であるので, 今できることを考えなくてはいけない。 もちろん,科学技術全般を発展させることは重要である。 例えば,宇宙開発は非常に重要であるが,強い反対がないため, これからも粛々と進んでいくと思われる。 それに比べて,文明の衝突により国際開発は阻害されるかもしれない, 私には全く理解できないのだが原子力や遺伝子組み換えに反対する声も大きいし, 同様に人口知能のようなものが生まれそうになる(現状はとてもできそうもないが)と, 必ず反対運動が起きると考えられる。 人間のおろかさによって阻害されそうな, 国際開発,原子力の推進,生命/情報科学技術を特に推進する必要がある。 これらについて,一つずつ説明する。
まずは国際開発である。 科学技術を進歩させられるものは現状人間だけである。 動物は数を数えることができても,微分方程式を理解できるとは思えない。 宇宙人はいるかどうかわからないし,いたとしても共同で作業するには遠すぎる。 通信の往復にどんなに短くても数百年はかかる。 宇宙人が超光速の技術を持っていたとすると,現在の人間の物理学は使いものにならず, この話も役に立たないかもしれない。そのときは,宇宙人に謙虚に教わるしかないとは思う。 それでも現状は,私たちがわかる範囲では, 人間だけが科学技術を発展させることができることに間違いはない。 それならば,科学技術をより発展させるためには, 科学技術の研究に携わる人間を増やすべきである。 私は,仕事の関係でほぼ毎年,10数名の学生とともにフィリピンに行き, 学生交流を行っている。 もう,9回ほどこの交流を実施している。 日本の学生はフィリピンの学生に比べて優秀だろうか? もちろん,フィリピンではかなり優秀な学生が集まる大学であるが, こちらも東京工業大学の学生であるので,日本でも優秀な方である。 結論から言えば優秀さはあまり変わらない。ベストセラーになった,
ジャレド・ダイヤモンド「銃・病原菌・鉄」,草思社,2012を読んで見てほしい。世界の国々の現在の差を,人種の違いでなく, 人間以外の外的要因で説明している。原生生物の分布,気温や水などの環境, 地形などによってこの差を説明してる。 文明ごとの特性の違いもかなりの部分が外的要因に依存している。 経済を成長させることができれば, 社会の仕組みや考え方が少しずつ変わりながら,先進国に近づいて行くと思う。 そうすれば,科学技術に関わる人口が増え,その進歩が加速することになる。 逆に発展途上国が先進国になる過程で,多様性を失うと問題である。 科学技術には,国際的なグローバルな評価が求められることが多い。 インターネットの発達で,それがより容易になってきたため,その度合いも増加している。 このことは,多様性の立場から考えると非常に問題である。 科学技術が発展する道は尾根つながりとは限らない。 例えば,評価が極大点(その点からかなり離れたところにはより高くなる道があるが, その付近ではどちらにいっても低くなる場所)に捕まってしまうことがある。 ある理論や考え方が有効だと,なかなかそれから離れることができない。 化石燃料が便利過ぎて,他のエネルギーになかなか転換できない状況などもそうである。 このような状況を乗り越えるには,多様性が必要である。 あえて評価が低くなる方向に進んでいくことで,その極大点から抜け出すことができる。 もちろん,個人レベルの天才で済むならば, 変な人は多数いるので心配はいらないかもしれない。 ただし,科学技術が高度化するにしたがって個人の力は限られてくるため, ある程度まとまった人数と予算で反対方向に進んでいくことが必要になる。 グローバルに評価すると,このようなグループの存在が難しくなり, 進歩が止まってしまう可能性がある。 国際的という意味でのグローバルな評価が, 本当意味でのグローバルな最適化を阻害してしまうのである。 したがって,国際開発を進めるとしても,安易なグローバル化は避けるべきである。 文化的相違性を持ちながら,違うことを認めながら,国際開発を続けていくことが必要である。 ある意味,文明の衝突は大域的にエントロピーを最大化するためには必然なことと思う。 最終的には,宇宙に自給自足で住めるようなり,国際から,星際に発展していくべきである。 こうなれば,さらに多様性が拡大し,科学技術の進歩を加速すると考えられる。 また,宇宙に広がれば,小惑星,疫病,核戦争などで,地球の人類が絶滅しても, 人間は前に進んでいくことができる。
次に原子力である。 原子力発電ぐらい維持できなければ,ブラックホール発電はできないと思う。 宇宙に出れば被爆は避けられない。 バンアレン帯に守られた宇宙ステーションでも,1日あたり0.5から1mSV程度被爆する。 したがって,将来的に人間が放射線に強くなるためにも,原子力は是非必要である。 ただ,そのような話ばかりでなく,現在の技術レベルで人間がエネルギーを得るためには, 原子力が最も環境負荷が小さく,安全であるため,今のためにも必要である。 詳しい話は別な稿で詳しく書きたいと思うので,ここでは簡単に述べる。 現状,日本では石油が急に使えなくなれば,半数以上の人間が生きてはいけない。 数千キロ以上離れたところで,日本へのエネルギー供給を止めることができるである。 太平洋戦争は基本的には日本への年600万トンの石油を止められたために, それを解決するために日本が起こしたことを忘れては行けない。 現状でも,石油が止められた場合,降伏か戦争しかない。 中東で大きな戦争が起きる理由も,石油が存在するためと, その代金で兵器を購入することができるからである。 一般に,エネルギー利用に危険がつきまとうものである。 火事で亡くなっている方は年に1,300人ぐらい存在する。 ガスならば,メキシコのガス爆発では500人程度の死亡者を出したことがある。 日本でもガス爆発で70人程度が死亡したこともある。 扇島にある20万kLタンクのLNGは, 100万kwの発電所がフル稼働すれば1ヶ月程度で消費する量である。 全部がメタンとすると, 比重が0.425程度であるので,約8.5万トンの天然ガスが入ることになる。 燃焼したときの熱量は13,300 x 1,000 x 85,000 x 1,000 = 1.13 x 10^12 kcalになる。 TNT 1グラムは約1 kcalであるので,TNT 1.13 Mtonの熱量を持っている。 広島の原爆の50倍のエネルギーである。 これが蒸発し爆発することが物理的に不可能ということはない。 この1/10の1万トンはLNGのタンカーの一つのタンクの分量であるが, タンクが破れて海に広がれば,6分程度でほぼ全量が蒸発すると試算されている。 1万トンでも広島の原爆の5倍のエネルギーである。 東京湾には大小様々なタンクがあるが,20万kLに換算して30基分存在する。 もちろん,ほとんど安全であるけれど,絶対かと言われればそうではない。 石炭火力発電は,公害の塊である。 石炭火力発電の放射能汚染は原子力を越える。 石炭にはそれを高速増殖炉で発電に使うことができれば, その石炭以上のウランを含んでいるのである。 石油は石炭に比べれば公害が少ないが,それでも窒素酸化物や硫黄酸化物を放出する。 資源もだんだんと少なくなって来ている。 太陽光はコストがかかりすぎである。蓄電を考えればさらにコストは上昇する。 また,太陽電池を屋根に載せるぐらいならば良いが,新たな土地に設置するならば, 環境負荷も馬鹿にならない。 風力も安定性に欠けるし,それを補おうとすれば電池がいる。 いったい,何日分の電池があれば安心なのか,良く分からない。 もちろん,100日分程度あればかなり安心とは思うが,それはコスト的に考えられない。 1人当たりのGDPと平均寿命には,はっきりとした正の相関がある。 国にお金がなければ, 高度な医療をだれでも受けることができるという状況を維持することはできない。 広い意味で安全性がないということができる。 さらに,エネルギーコストが上がれば, 太陽電池や風力発電のための機器を作成するコストが上り,それがエネルギーコストを引き上げるという正帰還がかかってしまう。 コストを上げないために,機器の輸入に頼れば国富が流出してしまう。 また,自然エネルギーの話でもう一つ注意しなくてはいけないことは, 他国と量を比較することに意味がないことである。 それは農業と同じで,環境に依存するからである。 フィリピンでバナナが大量に効率的に生産できるからといって, 日本の本州でバナナを作っても商売にならない。自然エネルギーも同じである。 やはり,安定的にエネルギーを得るためには原子力の他はない。
生命科学は,「人口を抑制し文明的な生活を続けていくためには,遺伝子操作などによる人間の改造が必要である.」で述べたように,第一に人口問題を解決するために必要である。
ほどんどの人が天寿をまっとうし,自由意志で子供をつくることができるという状況は,
進化的に安定な戦略にならない。
そのような状況を維持するためには,遺伝的アルゴリズムから脱却しなくてはいけない。
次に,人間が宇宙でできるだけ制約なく活動できるようにするために,
人間を放射線に対して強くなるように改造したり,
放射線によってかかったガンを直せるようにするために必要である。
さらに,科学技術を進歩させるために,より人間の知能を高かめるためにも必要である。
人間の改造によると科学技術進歩をスパイラル状に進めていく必要がある。
情報科学技術は,有機体の人間で限界がある場合は,
人間以上の知能を持ち,自分で維持・進歩することができるロボットを開発するために必要である。
人間のような個体の自己修復能力が難しいとすれば,
組織的な自己修復能力,
すなわちあるロボットの部品をたのロボットが交換できるような能力によって,
維持して進歩していくような能力は必要である。
このようなロボットができれば人間は不要になるが,
そのようなロボットは人間の子孫と考えれば良い。
そして,ロボットの管理のもと,人間は気楽に生活することができるようになると思うが
(出産制限のための処理は受けるかもしれない),
そのときまでは,人間は頑張らなくてはいけない。
無茶苦茶を書いていると思う人もいるかもしれないが, そうしないと,少なくとも宇宙に住めるようにならないと, 人間や人間が生み出したものが生き残る可能性が高くはないと思う。 小惑星や太陽のせいで人類が滅びても, それは自然の業で受け入れるという人もいるかもしれないが, 私は人類またはそれが生み出したロボットが滅びるのはいやであるし, 結局滅びないものしか残らない。 滅びたかったらどうぞご勝手にというしかないのだが,邪魔はしないで欲しいと思う。