目次

お酒を飲みながら,管元首相に原子力の話を伺った.

主な主張

経緯

 管元首相は東工大出身であり, 私が所属する専攻に所属していた管元首相と同期の先生が, 管元首相に東工大で原子力やリーダーシップについて非常勤講義をお願いした。 管元首相にすぐに快諾されたとのことである。 講義でのお話のあと立食パーティやそのあとの新華園での宴会でお話を伺った。 私が原子力賛成派ということは特に言わずに,話を伺うことに専念した。

内容

首相は大変である

 当たり前かもしれないが,首相は大変である。 原子力の事故の対策に関して首相が原子力保安員や東電と相談した上で, 首相が最終決定をしなくてはいけない。 多数決というものではなく,首相が決定するのである。 当然,首相をサポートする原子力保安員が原子力事故の対策について詳しくなくてはいけないはずであるが, 保安員長は(大学の専門で判断することは問題かもしれないが)東京大学の経済学部出身であり, 事故はおろか原子力についても良く分かっていなかった。 また,東電も平時の運転に関しては詳しいが,異常時に関しては良く分かっていなかった。 最終判断は首相がしなくてはいけないのに,誰を信用して良いか分からない状況だった。 そのため,現地に飛んで確認することが必要と考え。 それが,震災の翌日に現地へ飛んだ理由とのことである。 そして,現地で所長に会ってから,できるだけ所長にまかせるようにしたとのことである。

5,000万人退避

 その後で被害にあった原子炉すべて(10基)がメルトダウンした時の被害想定を行った。 東京を含めて5,000万人の避難が必要という結果になった。 実際問題として5,000万人避難の実施はほどんど不可能だった。 それが今原子力を反対する理由である。

アメリカ合衆国原子力規制委員会

 アメリカ合衆国原子力規制委員会(NRC)は, 原子力潜水艦や原子力空母を所有している海軍出身の人が多く, 原子力に詳しい上に商業と分離していて,独立性が保ちやすい。 大量の火薬や燃料のそばにある原子炉であるだけに, 安全性には非常に気をつけている (原子核工学の先生に伺ったことであるが, 原子力潜水艦の非常系は12Vでできていて(その代わり大電流が流れる), 海水が浸水して多少絶縁が不完全なところがあっても, 電流が漏れ電気分解で泡がたつが,動作には支障がないようにできている)。 それに対して,日本はみんな仲間で規制が有効に効かなかった。

感想

 エネルギーが急に止まれば半分の人間が生きていけない日本では, エネルギーの安定供給のために原子力が必要であることは疑いのないことである。 今回の事故における敗因は, 大きな事故に対する対策を全くといっていいほど考えてこなかったことと, 放射能を出すことに対する抵抗が大きすぎたことである。 事故は起こらないことにしないと,原子力の推進ができないという面があったとは思うが, それでも事故の対策は考えておくことが必要である。 たとえば,蒸気動力の冷却系などを有効に使うことができなかった。 また,放射能を出すことに対する抵抗からパージが遅れた。 そのため,メルトダウンを引き起こし格納容器を損傷してしまった。 できるだけ早く,風向きを考え住民が十分に避難した時点でパージを実行し, 炉の圧力を下げ海水を注入すべきであったと思う。 また,屋根に穴を開けて水素爆発を防ぐことが必要だった。 もし,いま全く同じことが生じても,水素爆発は防ぐことができるはずであるし, 汚染水の問題も生じないようにはできる。 早期に冷却できていれば,セシウムなどの放出も桁外れに小さくできたはずである。 そいう意味では,経験によって学んだことになるが, 事故に関しては経験に学ぶより前に,具体的な対処を明記した手引書が必要である。 そのようなものの作成をお願いしたい。

 ひどい状況になってしまっているが,首相個人の責任という感じは全くしない。 他の人が首相をしていても同様の結果になったと思う。 だれが正しいことを言っているか,準備がなければすぐには分からないものである。 であるから,しっかりとした準備が必要である。 そのためにも,原子力の必要性をきちんと説明し, 事故の研究をする自由を担保することが必要なのである。

 もう一つ,自衛隊が原子力空母や原子力潜水艦を持って入れば, 独立な規制機関が実現できるばかりでなく, 原子力事故対策の装備を持つことができるはずであるし, 放射能に対する知識が深まり,自衛隊による有効な対策が取れたと思う。 ぜひ,その方向に関しても考えてもらいたいと思う。


自動麻雀採点機

 管元首相といえば自動麻雀採点機の特許が有名であるが, それに関して次のようなお話を伺った。


Yukihiko Yamashita (yamasita@ide.titech.ac.jp)